パンドラの箱の中には…

普段ゲイ生活の36歳。ゲイ生活の中で得たスキルや知識をアウトプットするゲイブログ。

ACT.6:I WANT TO KNOW MISUNDERSTANDINGS

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この前、僕の夢の中に初めて彼が出てきた。
この段階でこれは夢だってちゃんと理解できた。
ついに自分の夢の中にまで彼が出てくるようになったんだ。
潜在的に自分の中の意識が彼に傾きかけているんだなと思う。

 

夢を見るたびにいつも思うこと。
どうして自分の夢なのに、
コントロールできないのだろう。

 

自分の夢なんだから、
押し倒してしまえばいい。
キスしてしまえばいい。
犯してしまえばいい。

 

でも、なぜか出来ない。
夢も現実もたいして変わらない。

 

そうして何もしない夢から目を覚めて、
消化不良のままベッドに沈んでいく朝。

 

彼は夢に似ている。
近づこうとすると遠くなる。
でも決して届かない場所にいるわけじゃない。
だけど、意図的なのか無意識なのかはわからないけれど、
いつも試されてるかのような程よい距離を置いてくる。

 

***

 

先日、お酒の場でやらかしてしまった。
僕が翌朝、昨晩の記憶がなくなるときは、
大体、悪態つき出すか、泣き出すかのどちらか。

 

記憶はなくてもだいたいわかる。
目が腫れてるし、体に変な痣やカサブタがあったりする。

 

彼はそんな僕を見ている。
後日、彼がいる日を見計らって謝りに行った。
別になんとも思っていないと口では言う。
「お酒の場なんだから、仕方ないよ。」と優しく言ってくれる。

 

その後、しばらくお店でお酒を頂いた。
でも、話題がなかった。

 

よくよく考えると、
彼の趣味をよく知らない。
僕と彼の共通点は売り専とゲイビデオ。
僕がどんだけ彼から良い刺激をもらい、
新しい世界を見つけて、
それから彼の事を慕っていても、
尊敬しているとしても、
傍からみれば、
結局はビデオを見ていた人と、そのビデオに出ていた人、
そして、お金を払って抱いた側と抱かれた側でしかなかった。

 

その時期は僕の父親が仕事を辞めた時だった。
父親はヘルニアで腰を悪くして入院、手術をして、
それから退院はしたものの3ヶ月は安静にしてと先生から言われていて、
会社もそれを了承してくれていた。
しかし、父親はそれを待てず1ヶ月で復帰しようとしたが、
結局腰がダメで仕事にならず、会社に居づらくなって自ら辞めた。

 

僕は最初、父親が理解できなかった。
折角会社員なんだから、図々しくクビを言われるまで居座ればよいのにと思っていた。

 

ふとお店の中で仕事の話になり、
そんなことがあったってことを彼にさりげなく話した。

 

「お父さんの言ってることの方が理解できる。」

 

「どうして?」

 

「売り専でボーイが売れないまま店で待機しつづけるのは苦痛だよ。
うちは保証金とかなかったけど、
ずっと何日も指名を取れず、
いつもお茶を引いて保証金をもらうのは耐えられない。」

 

「…。」

 

「自分の満足の行く仕事ができなくて辞めるのは、
それで会社からお金をもらうのが心苦しいってことでしょう?
真面目なお父さんじゃない?」

 

何も返す言葉がなかった。彼の方がよっぽど現実的で大人な考えに感じた。
沈黙の中を規則的に4つ打ちのハウスBGMが割いて行く。

 

そして、彼がそっと口を開く。

 

「頑張ってはいたんだけれど、俺、最後は全く売れなかったんだ。
1週間に1回とかしか指名をもらえなかった。
もう年齢かなって。だから頑張ってもどうにもならないことってあると思う。
それでも生活していかなきゃいけないから、今はここにお世話になっている。
俺は学歴も何もないから、ここに必死でしがみつくしかないんだよ。」

 

 

その日は重たい気持ちで家に帰った。
それから1週間近く、ただただ胸が痛くなる日が続いた。
彼に言われた言葉をずっと考え込んでいた。


少なくとも彼は辞めたくて辞めたわけではない。
きっと続けたかったのかもしれないけど、
辞めて別の道に進まざる負えない状況だったんだ。

 

先日ディズニーに行った時もそうだったけど、
芸能人と一緒にデートをしているような気分で、
ちょっとフワフワした気持ちで彼と接してた。


もしかしたら、僕が彼をゲイビデオモデルや売り専ボーイとして、
尊敬すれば、尊敬するほど、彼を傷つけているのかもしれない。

そんな考え事をひとつひとつ整理していって、
自分の中で着地点が見えてきた。

 

 

尊敬は自分の心のうちにとどめておいて、
売り専ボーイとか、ゲイビデオモデルとかではなくて、
まずは一旦、1人の人間として見て、
彼と向き合ってみたい。
彼の事を少しずつ知って行きたい。

 

だからもうビデオの話とか、
売り専の話とか、
自分からは言わないようにしよう。

 

 

そう決めた矢先のこと、
何度かお店を訪ねたけれど、
それから彼がお店に来ることはなかった。

 

 

彼は夢に似ている。
近づこうとすると遠くなる。